研究所紹介  

イスラーム研究センターニューズレター Vol.2 No.2 

研究員紹介

 平成16年 10月19日発行 

■ イスラーム法入門(2) 
    イスラーム研究センター客員教授 有見 次郎

■ 第18回蔵王ACT文化交流セミナー 講演記録 
  
『イスラームにおける国家と外交』
    イスラーム研究センター研究員 ザキ ムハンマド

 イスラーム団体訪問記
    シャリーア専門委員会委員長  武藤 英臣

 イスラーム研究センター・講演会開催

 海外からの来訪者

  □ 
サウジアラビア・イマーム大学学長訪問

  □ 
マレーシア国際イスラーム大学理事長訪問

 お知らせ

  □ 
ハラール・セミナーの案内−イスラーム文化理解−

研究成果
 
ニューズレター
 Vol.2No.2
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発行人 拓殖大学イスラーム研究センター
編集人 イスラーム研究センター主任研究員 柏原 良英

 
 

◆◇◆イスラーム法入門(2)◇◆◇ 
イスラーム研究センター客員教授  有見 次郎

  ◆◇イスラーム法理論(ウスール=ル=フィクフ)

 学問としてのウスール=ル=フィクフ、またはイルム・ウスール=ル=フィクフ(イスラーム法理論学)とは、イスラーム法の解釈に際して遵守すべき手続きを論じ、法学の諸根源に関する学問分野のことである。

 法源学と呼ばれるこの学問の生いたちは、預言者ムハンマドに下されたクルアーンと、預言者の慣行であるスンナが預言者の逝去によって途絶えたため、それ以後のサハーバ(教友)たちの時代から、さらにその門下生たち(タービイーン)の世代になって、法の体系化のために法学者たちの学問的努力によって整えられたのである。

 また言語上の意味からは、ウスール=ル=フィクフは、法学者が法判断のために必要とする根拠となりうる法源のことである。さらに法適用に関しては法学者によるイジュティハード(学問的努力)が必要とされた。かれら法学者たちのイジュティハードとは、いかにフクム(法規範)を唯一にして無二の絶対者であるアッラーから示された公明な道、つまりシャーリアを遵守して求めていくのか、という努力にかかわっている。
◆◇1.ムジュタヒド(イジュティハードを行う者)の条件
 イジュティハードを行う者、すなわちムジュタヒドは、狭義には法学者を指し、ウンマ(イスラーム共同体)の構成員である信者は、これら法学者が導き出した法規範に従うよう求められるのである。だが聖職者が存在し、法源学に関する法学者の見解が時代によって異なるシーア派を除いた多数派のイスラームにおいては、イスラームに帰依した男性・女性を問わずすべての信者に対し智を追求し、会得した智に基づいて実践すること、つまりイジュティハードが義務として課せられている。

 しかしながら厳密にはムジュタヒドとしての条件は以下の項目を満たさねばならないとされる。

@アラビア語に長けていること
 唯一にして無二、絶対者であるアッラーから示された公明な道シャリーアの絶対的法源であるクルアーンとその使徒ムハンマドの言行録であるハディースを理解し、規範を導き出すためには、アラビア語の語法や文章が言葉の本来の意味なのか比喩なのか、また要約なのか顕著な例であるのか、規範となるのか例えであるのか等を正しく理解できなければならないとされる。

Aクルアーンについての知識
 ムジュタヒドにとって欠くことのできないことは、諸規範についての明文をクルアーンの章句から導き出す場合、クルアーンに示された章句が、一般的な例なのか特例であるのか、またその明文が、他の明文と同一事項あるいは類似事項を廃棄するのか、または廃棄された章句なのかを知らなければならないとされている。これは新法が旧法に優先されることを意味しているのである。シャリーアの第一の根幹はクルアーンであるため、クルアーンに関する知識はムジュタヒドにとって特に重要なのである。

Bスンナについての知識
 スンナはムジュタヒドが扱わなければならないクルアーンに次ぐシャリーアの第二の根幹である。これは預言者ムハンマドの言葉、行為、黙認等の中に多くの規範を含んでいる。これらスンナの中から本文、口伝者の連鎖において真正なもの、信憑性に欠けるもの等を明確に分かつ努力、理解が不可欠であるとされる。

Cイジュマー(合意)についての知識
 預言者ムハンマドの言葉に「イスラーム共同体は悪に対して、意見の一致をみることはない」「共同体はその合意において、誤ちの余地はない」とある。
 このことからムジュタヒドは合議の役割を理解していなければならないとされる。それはムジュタヒドが互いに主張し合い意見がまとまらない場合、イジュティハードの場としてイジュマーがあること、また初期のムジュタヒドたちが、問題解決の道を開いていなかった新たな事項に関する努力の場であることを理解しなければならないとされる。

Dシャリーアの目的と法源についての知識
 これはシャリーアの証明を順序だてて知ることであり、諸規範の適用方法、意味内容に関する証明方法、また法源において何が優先されるべきなのかを知らなければならないとされる。

Eイジュティハードにおいて常に宗教的本性を持っていること
 これはムジュタヒドが、清廉潔白な思慮分別のある人物であることや見識眼を持ち正しい理解をもち合わせていることなどである。

 これらの諸条件を満たして初めてムジュタヒドとしての法学者(ファキーフ)の位置が明確なところとなる。
◆◇2.ジハードの意味
 「アッラーの道のために、限りを尽くしてジハード(奮闘努力)しなさい」(クルアーン第22章78節)

 ジハードという語はクルアーンの中で数多くの章句に繰り返し説かれている。法学者のイジュティハードが、法源からフクム(法規範)を徹底的に研究し、適用するという努力を示すことだとすれば、このイジュティハードもアッラーの道のために努力することを指す。

 ジハードは広義の意味において、信者がその目的を達成するためにアッラーの教えに従い、アッラーの道のために自分自身を捧げたり、また貴重であり愛着のあるもの、熱中しているもの、充足し安定した楽な暮らし向きや快適な生活等々すべてを捧げて努力することでもある。

 したがってムスリム各自に定められたシャリーアの実践は、信者の清廉潔白な主観的意思決定(ニーヤ・サーリハ)がなくしては、無に等しい行為、思考となる。絶対主であるアッラーが導き出したとしても、それに従う信者個人の正しい意思決定の完徹さがなければ、シャリーアを充分に遵守したことにはならず、シャリーアが徹底化されることにはならない。

 しかしシャリーアとは信者にとって、現世と来世への必要かつ有効なイルム(科学的知識)なのであり、イルムは正しい導きによってもたらされる限り、それを踏まえることはたやすいことである。

  「本当にわれは、クルアーンを易しく説き明かした。さあ、誰か悟る者があるか。」
                                           (クルアーン第54章17節)
◆◇3.各法学派の形成
 法源学はムジュタヒドの個々の努力が花開くヒジュラ暦二世紀に、法学者たちの法的根源として整えられた。それ以前の前法学派ともいうべきサハーバ(教友)たちについてみてみよう。

 まず預言者の逝去にともなって起きたその後継者の選出についての問題。さらに預言者の逝去をもってイスラームの終焉と称して離反(リッダ)した者たちが主張したザカート(喜捨)不払いについての問題。またそれによって生じたムスリムと離反者たち(ムルタッドゥーン)との戦役において、クルアーンを暗誦していた者たちが多数戦死したことによる憂慮から始まったクルアーンの結集。

 これら一連の出来事に対処したのは、預言者の教友たちであり、彼らがこのようにさまざまな問題に関して下した見解を、後の法学者のアブー・ハニーファ(ハナフィー派の祖)は、クルアーンとスンナに次ぐ法源として採用した。

 かれらサハーバたちの間で有名な人物は、ウマル・イブヌ=ル=ハッターブ、アリー・イブヌ・アブー・ターリブらのカリフやイブン・マスウードなどであった。

 特に正統四代カリフたちとサハーバとを分けて考えることがある。正統四代カリフについて言えば、かれらの下した法解釈は常にクルアーンに基づくか、預言者のスンナ、後世に記録として集成された真正なハディースに求められ、キヤース(類推)によることはなかったとされている。

 またサハーバたちの見解を法源として採用することについては、法学者たちの間で異論がある。

 次に四法学派の成立とその特色をみる。

◆ハナフィー派
 二代目カリフのウマルによりイラクのクーファへ遣わされたイブン・マスウードと、その多くの門下生らによる、アフル=ル=クーファ(クーファの人々)や、アフルッ=ラアイ(個人的見解の人々)別称ラビーアトッ=ラアイ(ラアイの庭)と呼ばれた人々を中心として学派が広まったハナフィー派の学祖は、アブー・ハニーファであり、法学派の中でも古く、イラクには少数ながらもエジプト、ペルシャ、ビザンチン、ブハラ、インド,セイロン、イエメンなど広範な地域に及んでいた。特色といえばサハーバたちの見解の次にイスティフサーン(情状酌量)を認めている点である。

◆マーリク派
 アラビア半島ヒジャーズ地方のアフル=ル=ハディース(ハディースの人々)を中心として構成されたマーリク派の開祖マーリク・イブン・アナスは、マディーナを中心として預言者と共に生き、預言者への啓示にも触れたサハーバたちや、その門下生たちの伝えた諸見解を数多く含むハディース集「ムワッタア」を編んでいる。法源としてクルアーンに劣らずハディースを重視しているが、問題解決に及んでハディースの真正なもの(サヒーフ)が得られない場合には、サハーバの見解を取り入れている。
 またマーリク派の認めるアル=マサーリフ=ル=ムルサラ(公共利益)の概念は、決して宗教儀礼的規範には適用されず、信仰教理に関する問題も除外される。適用されるのは、もっぱら日常行為(ムアーマラート)における法的規範や習慣に関する問題にである。この法適用が多用されたのはサハーバの時代において顕著であったとされる。

◆シャーフィイー派
 イラクでハナフィー派が広まり、マディーナではマーリク派が盛んであった頃、ハナフィー派のイスティフサーンやマーリキー派のマサーリフ=ル=ムルサラを採用しないムハンマド・イブン・イドリース・アッ=シャーフィイーは、クルアーンとスンナに次ぐ法源として真正な遺産を継承し、異なる意見のあるときは法学者の意見の一致であるイジュマーに従った。さらにそれでも解決の糸口のない場合は、キヤースに求めた。キヤースが行われる場合、たとえ法学者といえども単独で自由にキヤースを行うのではなく、ムジュタヒドとしての条件を踏まえたうえで、さらに異なる意見に耳を傾けることを忘れてはならないとされた。

◆ハンバル派
 アフマド・イブン・ハンバルを祖とするハンバリー派は、スンナの法学(フィクフッ=スンナ)として知られる。またイブン・ハンバルはハディース学の大家でもあリ、ムスナド(ハディースの伝承者に重きを置いた編纂)を著わしている。この派の法源は五種からなるとイブン・カイイムは述べている。第一に明文(ヌスース)に見い出せたならば、ラアイ(個人的見解)にもキヤース(類推)にも従ってはならない。第二にサハーバたちの法的意見に従う。これは誰一人反対者のない場合に限られる。第三はもし反対者があればサハーバたちの法的意見から選択する。それはクルアーンとスンナに最も近いかれらの法的意見を選択することである。第四にダイーフ(信憑性の弱い)とされるハディースを採用する。以上四つの段階で法適用が求められなかった場合、第五にキヤースが必要とされる。

◆ザーヒリー派
 最後にザーヒリー派について、その法源は、クルアーンとスンナそしてサハーバの法的意見は認められるが、キヤースは除外されている。かつてはペルシャやアンダルシアで多くの人々の支持を得た。

◆◇4.法学の諸原則
 1) イスティフサーンまたはイスティフバーブ(情状酌量)
 2) アル=マスラハト=ル=ムルサラ(公共利益の原則)
 3) ウルフ(慣習)
 4) イスティスハーブ(継続の推定に関する原則)
 5) マズハブ・サハービー(サハーバによる原則)

 それぞれの諸原則を簡略すると、イスティフサーンまたはイスティフバーブとは、ハナフィー派に採用されている原則で、キヤースと密接に関連し、キヤースを外的な部分とすれば、その内的なものとされる。例えば、ある者の死が長期間知られない状態であった時、遺族はその遺産の権利を失うとされ、マーリク派もこれを認めるが、シャーフィイー派では、イスティフサーンを認めずイスティスハーブという原則に従って、知られずに死んだ者の死が発覚すれば、その遺族は相続の権利を有するとされる。

 イスティスラーフまたアル=マスラハト=ル=ムルサラという原則は、マーリク派に認められ、初期イスラーム時代、サハーバたちの時代において多くの例を見い出せる、公共利益の原則をいう。
 ハナフィー派において認められるマズハブ・サハービーとは、キヤースより先んじる原則となっている。それは、預言者の存命中に時を共有したサハーバたちの言動は、かれら自身の発案ではなく、シャリーアに導かれた預言者自身を目の当たりにしていたもので、信頼に足る根拠となっているのである。またハナフィー派では、ウルフ(慣習にもとづく法)をキヤースより重んじている。


 アッラーからの絶対的なメッセージであるシャリーア。その法源として他の諸法源に対して独立した位置を占めているクルアーンとスンナ。アッラーへの服従と帰依によって、平安を求めるムスリム。彼らの現世上における指針として示されたシャリーアを如何に知り、体得し、来世での永遠の至福を得るかに関してなされる学問的、知的な努力であるフィクフは、現世、未来、復活の日までにわたる法適用なのである。そしてこの学問的努力は、各々の信徒に対しその能力により委ねられるところでもある。

 「この教えは、あなたがたに苦業を押しつけない。」(22章78節)

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◆◇◆第18回蔵王ACT文化交流セミナー 講演記録 『イスラームにおける国家と外交』◇◆◇
イスラーム研究センター研究員 ザキ ムハンマド
 ACT(財団法人国際研修交流協会)が毎年行っているセミナーに招待され、「イスラームにおける国家と外交」というテーマで講演を行った。その講演記録を掲載したい。セミナーは、7月19日から22日に亘り「アジア太平洋地域の協調と連帯−地域間の相互交流を深める−」と題して、宮城県の蔵王で開催された。今回は、自民党政務調査会長の額賀氏をはじめ政財官のトップクラスの人やアジア諸国大使などのそうそうたる人々が出席していた。参加者は30人程いた。私はこのセミナーの中の特別セッションで講演を行い、参加者にイスラーム理解の必要性を訴えた。以下はその講演の要約である。

◆◇イスラームとは何か

 イスラームとは、神の意志への完全な「服従」を意味し、語源は「平和」です。そのメッセージは、アダムに始まる諸預言者への啓示と基本的に同じですが、最後の預言者ムハンマドに啓示された啓典「クルアーン」は包括的かつ完全で最終的な形です。それは、現世、来世における個人、家族、社会、国家、全世界を含む全体的制度であり、人種、肌の色、言語、時代、場所には関係ありません。

 今日、世界の人口の5人中1人がイスラーム教徒です。イスラームが世界に急速かつ平和裡に普及した主な理由は、唯一神のみへの信仰という教義の簡潔さにあります。

◆◇アッラーとは誰か
 アッラーとは、全世界の唯一かつ真の神、類なく同位者もない、宇宙の創造者、保持者です。生みも生まれもせず、何にも内在せず、いかなるものも内在しません。全被造物に必要とされますが、彼自身は何も必要としません。
◆◇イスラームの平和主義
 神は自衛の場合にのみ、戦争の許可を与えています。自分から戦争を始める者は不信仰者であり、神はその戦争を承認しません。

「…彼らが戦火を燃やす度に、アッラーはそれを消される。また彼らは地上で害悪をしようと努める。だがアッラーは、害悪を行なう者を御愛でになられない。」(クルアーン5章64節)

 また不要な挑発や暴力の使用を避けなければなりません。

「あなた達に戦いを挑む者に対して、アッラーの道のために戦いなさい。だが限度を越えてはならない。アッラーは限度を越える者を愛されない」(2章190節)

 神はまた次のように語っています。

「アッラーは、宗教上のことであなた達に戦いを仕掛けることも、あなた達を家から追放することもなかった者達に対して親切にし、公正に待遇することを禁じられない。アッラーは公正な者を御好みになられる。アッラーはただ次のような者を友とすることをあなたがたに禁じられる。宗教上のことであなたがたと戦いを交えた者、あなた達を家から追放した者、あなた達を追放するにあたり力を貸した者達である。…」(60章8-9節)
◆◇ジハードの意味
 「ジハード」の意味は「努力」、「ジハードを実行する」ことは「努力し、自らを守る」ことです。預言者ムハンマドは、「最も優れたジハードとは、自身の下等な精神に対して行うものである」と語りました。「下等な精神」とは、利己的な願望や邪悪な野心です。反宗教や無神論への戦いも、また物質的な戦いも「ジハード」とみなされます。しかし、イスラーム教徒は決して聖職者、修道士、修道女、弱者や無力な人々への加害、一般人の大虐殺を行ってはならず、たった一本の木や一棟の建物でさえも倒してはなりません。
◆◇イスラームにおける国家
 イスラーム法学者イブン・タイミーヤは「人々の諸事を統制することが、イスラームの最も重要な義務の1つであることに留意すべきである。実際に、それなくしてイスラームを確立することはできない。良く組織化された社会による以外に、アダムの子孫の幸福を成就することはできない。彼らはお互いを必要としており、そのような社会には統治者が不可欠であるからである」と述べています。また「三人連れで旅に出るなら、その中の一人を指導者にすべきである」という預言者ムハンマドの言葉をとり上げ、「指導者が、『旅』つまり少人数の一時的な集まりにも必要であると考えるならば、それはすべての種類のより大きな集団でも指導者を置くようにというムハンマドの指示である」と主張しています。

 自衛、正義、宗教的儀式の確立、虐げられている人々への援助、法に従った処罰など、あらゆる宗教義務を遂行するために、政府と国家の設立は必要です。イブン・タイミーヤは、神の戒律に反する命令には従わないように求め、不正な統治者への協力は禁じましたが、公な反乱を擁護はせず、不正な統治者を倒すことも奨励しませんでした。彼は「不正な統治者の60年は、統治者不在の一夜よりましである」と引用しています。たとえ専制君主的な支配者の追放であっても、混乱と無法状態が免れることはできないからです。

 イスラームでは、人生のあらゆる活動において道徳の原則を守ることが常に求められ、国家の政策も正義、真実、誠意に基づかなければなりません。故にイスラームは以下の義務を国家と個人に課します。契約、義務を果たすこと。相互活動と取引で一定の規則を定めること。権利には義務が伴うことを忘れず他者が義務を果たすべき場面では、その者にも権利があることを忘れないこと。権力と権威は正義の確立のために用い、不正には用いないこと。本文を神聖な義務として受け止め遂行すること。そして与えられた能力は信仰のために用いるよう神から託されたものとみなし、己の行動を神に捧げることです。
◆◇イスラームにおける外交の概念

 イスラーム法は敵とも和解する義務をイスラーム国家権力に定めましたが、これは外交手段によるしか実現できません。イスラームの歴史上、常に外交は社会的文化的発展をもたらしました。イスラームは、国家内での安全で平和な生活と共に、他国との平和で好意的な関係を教えています。

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◆◇◆イスラーム団体訪問記◇◆◇
シャリーア専門委員会委員長 武藤英臣
 8月3日から約3週間にわたり、マレーシア、オーストラリア、インドネシア、シンガポールのイスラーム諸団体を訪ねた。その概要を以下報告する。

 8月3日〜10日、マレーシアのサラワク州都クチンで東南アジア・大洋州地域イスラーム宣教評議会(RISEAP)総会に出席した。これは、2年毎に開かれ、今回は第12回総会、16ヶ国から29団体の57名が参加した。事務局はマレーシアの首都クアラルンプールに置かれているが、会長はサラワク州の首相(Chief Minister)である。
 RISEAPは、東南アジア、太平洋諸島のムスリム少数社会のムスリムのための組織が必要とのことから、マレーシア連邦政府のバックアップで、1980年11月に創設されている。
 前回と同様に、今回の総会でもハラール認証問題が提起された。しかし、事務局長がハラール認証は、各国の国内問題であり、本総会では取上げない旨発言があり、場外での不満応酬となった。フィリピンの団体は、一部の国がフィリピンの認証を拒否していると強い不満を述べていた。

 8月11日〜15日、シドニー。イスラーム評議会オーストラリア連盟(The Australian Federation of Islamic Council Inc.)を訪ね、その案内で、シドニーから300キロ程離れた町の一日480頭の牛を処理する中規模ハラール屠殺食肉工場を見学した。牛の追い込み、感電させ気絶させてからイスラーム方式による屠殺方式、解体、食肉製造作業を具に見学した。また別途、オーストラリア・ハラール認証社(Halal Certification Authority, Australia)が認証する鶏処理工場も見学した。この会社は、一週間に350,000羽を処理するオーストラリアで3番目の規模の会社で、ここでは鶏をイスラーム方式で処理する工程を見学した。

 8月13日金曜日にはオーストラリアのムフティと懇談した。その際、小生がアズハルのシャリーア学部の後輩である事が判り、彼は小生を大歓待した。同窓生は有難いものだと感じた。

 8月15日、ジャカルタへ移動し、インドネシア宗教問題省のイスラーム担当部局を訪問した。その後、ボゴール農業大学を訪ね、大学内にある食品・薬品・化粧品検査研究所でハラール認証に関し意見交換をした。その際、(宗)日本ムスリム協会のハラール認証は、インドネシアのイスラーム学者評議会(MUI)が認める海外のハラール認証団体の一つとしてMUIリストに記載されている旨話があり、そのリストを入手した。

 8月19日、シンガポールへ移動し、その歴史が70年というジャミヤ・シンガポールを訪ねた。また彼等が運営する成人教育教室、孤児院、養老院、救急病院等を見学した。翌日は、シンガポール・ムスリム改宗者協会を訪ね意見交換した。この協会の代表は、RISEAPの常任副会長である。

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◆◇◆イスラーム研究センター・講演会開催◇◆◇
 平成16年度イスラーム研究センター主催による第1回目の講演会が、6月26日午後2時半より文京キャンパスで開催された。今回の講師は、当イスラーム研究センター客員講師であり同志社大学神学部教授である四戸潤弥氏で、テーマは「明治はいかにイスラームと接したか」という題で、40人くらいの学生や一般の参加者を前に行われた。

 講演は、明治時代に受け入れられたイスラームを当時は珍しい日本人イスラーム教徒有賀文八郎氏の活動を通して、日本社会の中でイスラームがどのように受け入れられたかについて話された。

 当時、イスラームなど馴染みのない日本のような社会で、いかにそれを理解させ受容させていくかという氏のやり方は、現在の日本社会においても参考になる面が大いにあると講師の四戸氏が具体的な例を挙げながら解説された。

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◆◇◆海外からの来訪者◇◆◇

◆◇サウジアラビア・イマーム大学学長訪問◇◆

 5月31日 サウジアラビア国立イマーム大学のムハンマド・サーレフ学長とその一行4人が拓殖大学を表敬訪問し藤渡辰信総長と懇談した際に、当研究センターの森伸生センター長、武藤英臣シャリーア専門委員会委員長、徳増シャリーア専門委員会副委員長、ザキ・ムハンマド研究員が同席し、両校のこれからの学術、人物の交流を促進していくことの確認を行った。

◆◇マレーシア国際イスラーム大学理事長訪問◇◆

 9月9日、拓殖大学の提携校であるマレーシア国際イスラーム大学のサヌーシ・ジュナイド理事長が拓殖大学の藤渡辰信総長を表敬訪問し、イスラーム研究センターのメンバー同席の許、会談が行なわれた。会談では、両校の現状や今後の学生の交流などについて話が行なわれた。ジュナイド理事長は会談後、イスラーム研究センターを訪問し、森伸生センター長並びに研究員と意見交換を行った。ジュナイド理事長はセンターの活動に大いに興味を示し、当センターの日本でのイスラーム理解への役割の重要性を強調された。

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◆◇◆お知らせ◇◆◇

◆◇ハラール・セミナーの案内−イスラーム文化理解−◇◆

1.日時    : 2004年11月24日(水) 13:00 〜 16:00

2.会場    : 拓殖大学文京キャンパス D館6F第一会議室

3.主催    : 拓殖大学イスラーム研究センター

4.協賛    : (宗)日本ムスリム協会、

5.講演者   : @世界ハラール評議会議長(インドネシア)
           Aインドネシア・イスラーム学者評議会ファトワ委員長  
           Bマレーシア連邦政府総理府イスラーム開発局ハラール担当部長
           Cイスラーム研究センターシャリーア専門委員委員長
           Dシャリーア専門委員

6.講演言語 : 日本語、英語/インドネシア語(同時通訳付)

7.内容    : @ハラールとハラームについて
           Aインドネシアのハラール事情
           Bインドネシアのハラール裁定方式(シャリーア判定手順)
           Cマレーシア政府のハラール認証方式  
           Dハラール認証、日本の場合

 

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拓殖大学 イスラーム研究所
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東京都文京区小日向3-4-14
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